きれいに整えられた手のひらを、あたしに見せ、ほら早くと急かす。
長く鋭利なゴテゴテのネイルが、まるでライオンの牙のよう。
お、恐ろしい……。
返してって言われても……。
「で、でも……っ、あ、あたしは、宇月くんからもらったので……」
「はあ? 聞いてなかった? ゆかりが舜也にあげたの。つまりそれはゆかりの物。……そうでしょう?」
「そ、そう言われましても……」
恐怖のあまり一歩引き下がる。大事な仲直りアイテムを守るようにぎゅっと抱えた。
ゆかりさんや、そのうしろにいる女の子の視線が、だんだんとつり上がっていくのがわかる。
「早く! 返してよ!」
ゆかりさんはきつくガンを飛ばしながら、ソプラノをきんと荒らげた。
ひぃ……!
女の子の嫉妬って凄まじい……!
びくりと体が震え、涙腺がゆるみかけた。
憧子ちゃんもこんなに怖い思いをしたのかなと思うと、よけいに心臓がバクバクと弾けた。
ど、ど、どうしよう……。
ここは返したほうがいい? そうすれば穏便に済む?
でも……でもね、本音はそりゃあ、返したくないよ。
わがままかもしれない。
いいの。
あたしにとって、プレミアムスイーツはただの甘いデザートじゃない。
朝の情報番組の占いで観たラッキーアイテムよりも、うんと運勢を左右をする。
あたし、このプレミアムスイーツに賭けてるの。
心底憧子ちゃんと仲直りしたいんだよ。
「早くしなさいよっ!!」
ゆかりさんの迫力に圧倒される。
しかしあたしもゆずれない。
かたくなに首を横に振った。
ごめんなさい。
これは返せません。
あたしに、ください。
「冗談やめてよね。さっさと返して!」
「……っ、」
女の子らしくもあり力強くもあるゆかりさんのトーンは、弱虫のハートをグサリと貫く。
弱虫には弱虫なりの覚悟がある。
今、覚悟を決めた。
どんなに返せと催促されても、あたしはそれを拒否した。



