「中に入ってるのは、ビタミン剤。薬じゃねぇから心配いらねぇよ。俺、ちょー元気だし」

「そ、そっかあ……」



なんだあ、ビタミン剤か……。

杞憂で、安心した。


南くんが病気だったら、憧子ちゃん心配するもんね。悪い予感が当たらなくてよかったあ。


……あ。憧子、ちゃん。

あたし、何を……。


こんなときまで、当たり前のように憧子ちゃんのことを考えてしまった。

考えたくなかったのに。
考えないようにしていたのに。


まるであたしの体の一部みたいに、不安になって、苦しくなって……安心した。

そんな自分に驚いた。



「俺のことより、幸村のほうこそ大丈夫か?」

「ど、どうして……?」

「……泣いてる、から」



ためらいがちに言われ、はたと気づいた。

ななめにずれた涙の跡に沿うように、ぽろぽろと雫が降っていた。


泣いてる……。

他でもない、あたしが、泣いてる。


やだ。もう……。
あたし……どうしたいんだろう。


あたし。あたしね。

きっと、絶対、憧子ちゃんを憎めない。


だって憧子ちゃんは、あたしの大切な友だちだもん。


大好きなところがたくさんある。衝撃なところを見ても、嫌いになれない。

いつだって、嫌いになるのは、自分自身のほう。


だから、いやなんだよ。



「だ、だい、じょうぶ……。っ、目に、ゴミが入っただけ……だから」

「……なら、いいんだけど」



南くんは気づいてるんだろうね。

あたしがついた、小さな嘘に。


あたしの精一杯の強がり。


でもだまされたふりをしてくれているんだ。ありがとう。



今日が金曜日でよかった。

気持ちを整理できる時間があって……よかったと、思っては、目頭が熱くなった。