「行くなよ!!」
「お願い、放してっ! 行かなくちゃ……。晴ちゃんを追いかけなくちゃいけないの!」
必死になって舜ちゃんの手を振り払おうとするが、力に負け、離すことができない。
やめてよ。なんでよ。
なんで放してくれないの?
「舜ちゃん、お願い……」
「いやだ」
「舜ちゃん!」
「今日は……そばにいてくれよ。今日だけでいいから。そしたら……もう、あきらめるから」
ぐっ、と腕を掴む力が、強くなる。痛いくらい力を増すにつれ、舜ちゃんの表情が強ばっていく。
そんな表情を見たら……断れないじゃんか。
本当は追いかけたいのに、私の全身の力がしゅるしゅると抜けていく。
あまりにも切なげな顔をして、私のことを見ないで。
胸が苦しい。
苦さばかりが広がっていく。
痛む心を抑えながら、黙って頷いた。
追いかけたい衝動を必死に消しながら、晴ちゃんがいた場所をただただ見つめる。
晴ちゃんはいつからあそこにいたんだろう。
どこから見ていたんだろう。
ねぇ、晴ちゃん。
私を、信じて。
舜ちゃんとは何もない。何もしてない。だから、またお喋りしようよ。
晴ちゃん……。
私は、晴ちゃんのこと、大好きだよ。
ふと思い出す。
今日が、金曜日だということを。