ふわりと、舜ちゃんの大きな手のひらが、頬に触れた。

慎重な手つきに違和感を覚える。


舜ちゃん……?



「っ、憧子」



舜ちゃんの顔がどんどん近づいてくる。

またしても警告音が脳裏に鳴り響いた。



「待って、舜ちゃん。やだよ! ねぇ! 舜ちゃ……っ」



キスされる!?

なんだか怖かった。舜ちゃんが、知らない男の人に見えた。


反射的に目を固くつむった。


そのときだった。



――ドサッ!


何かが床に落ちる音が聞こえた。



扉のほうからだ……。

私と舜ちゃんは音のした方向に顔を向ける。


そこには……



「! は、るちゃん……」



晴ちゃんが、いた。

カバンを床に落とし、目を丸くしている。


つぶらな瞳から、きらり、と。

一粒の涙が落ちたのが、夕焼けの光に反射して、いやにきれいに見えた。



「は……、晴ちゃん!」

「っ、」

「待って、晴ちゃん!!」



とっさに大声で呼ぶと、晴ちゃんはハッとして涙を拭った。

カバンを持って、その場から逃げるように走っていく。


……もしかして、誤解した?

私と舜ちゃんが……キス、したって。


誤解を解かなくちゃ!


遅れて私も走り出そうとしたが、舜ちゃんに腕を掴まれた。