この恋、賞味期限切れ



私を軽々と抱き寄せられる、この腕は、こきざめに震えていた。

こういうことをするのは慣れているものだと思っていたけれど、そうじゃなかったみたい。



「ありがとう……」



舜ちゃん。

舜ちゃんも、優しいね。


南の優しさとは少しちがう。舜ちゃんの優しさも温かいけれど、発熱のようにともっては、力強く包んでくれる。


舜ちゃんに抱きしめられていると安心する。

冷え切っていた心の中に、ひだまりが差し込んだよう。


ポタリ、ポタリ。
涙がこぼれていく。


でも、もう、冷たくない。寒くないよ。


きっと、それはまぎれもなく。

舜ちゃんのおかげだね。



「……なあ、憧子」

「何?」

「俺じゃ、だめか?」

「え……?」



雨が、止む。

目のふちにあふれた大粒が、次第におさまり、まつ毛の生え際を潤していく。


さっきまで止まる気配すらなかったのに。

舜ちゃんがそばにいてくれたから。


……舜ちゃんが、何か、意味深なことを言うから。



「ど、どういう、意味……?」



私が顔を上げようとすると、それを拒むみたいに舜ちゃんは抱きしめる力を強めた。

痛くはない。舜ちゃんの鼓動がよりはっきりと聞こえるようになっただけ。


鼓動が速まるにつれ、体温が上がったような気がした。