「そうだな。また行きたいな、二人で」
「……え?」
今、なんて言った?
二人で、なんて。甘い響きが聞こえた気がした。
私の妄想? 幻聴だったのかな?
そんな都合よく聞こえてくるはずない。そう思うのに……。
期待せずにはいられない。
ふわふわと心が浮つき――チクリ、と左手の人差し指に痛みが襲った。
「いたっ……!」
「どうした!?」
小さな痛覚に、過剰な反応を取ってしまう。
人差し指の先には、ぷくりと真っ赤な粒があふれている。
あわてた様子で南が私の指に触れた。
「だ、大丈夫! 紙で切っちゃっただけだよ。だからそんな心配し……」
ないで、と続けるつもりだった。
でも、言えなかった。
声が、出なかった。
「み、な……み?」
名前を呼ぶ。その声が震えていたことに、発してから気づいた。
どうして……
どうしてそんなことをするの?
人差し指に生あたたかい感触が帯びる。
南はちゅうちょなく私の人差し指を舐めた。
傷口をそっと撫でるように、鮮血を拭う。
なんで。
どうして。
何をしちゃってるのか、南、わかってるの?
いきなりのことで、私は耳まで赤くする。
こんなことされたら、自惚れてしまう。



