この恋、賞味期限切れ




カチッ、カチッ。
ホチキスを止める音だけが淡々と響く。


夏休み明け初日から活動する部活は少なく、通常であれば活気づいているかけ声や騒ぎ声は聞こえてこない。


オレンジの濃淡に色づく校舎に、静寂な空気が漂う。

二学期の始まりからわざわざ放課後に残って真面目に作業してる生徒は、私たちくらいだ。



ひとつの席に、ふたつの椅子が向かい合う。


南との距離が、近い。



顔、赤くなってないかな?

心臓の音、聞こえてない?


もう南への気持ちは伝えて、全て伝えきって……フラれたはずなのに、未だにドキドキして手が震える。



「松井? どうかしたか?」

「え!? な、なんでもないよ!」



うっ、しまった。南を凝視しすぎて、手が止まっていた。

南は怪訝そうに顔を覗き込んでくる。


か、顔が近いよ!!


反射的に椅子を数センチうしろに引いて、俯きながらごまかした。



「こ、こうしてるとさ……図書室掃除を思い出すよね」

「あー……あったな、そんなこと」



話題を変えようと、ふたりの思い出を振り返る。


とても懐かしい、大切な思い出。思い返せば、一ヶ月以上も前のことだ。

残暑の熱よりも、あのときのときめきのほうが身体を焼いた。


南とふたりきりで過ごせた時間は、全て私の――私と南だけの宝物。



「帰りに食ったアイス、うまかったよな」

「うんっ! また行きたいな~」



あの日は、初めて南とデートした日だったね。

ただ一緒に罰を受けて、一緒にアイスを食べて、一緒に帰っただけだけれど、すごく甘くて幸せな時間だった。