「いるよ」
ぽつり、と。
一言つぶやいた舜ちゃんは、すでに自分のクラスへ戻り出していた。
大きくなった背中を、私は呆然と眺めた。
返ってきた答えは、イエス、だった。
舜ちゃん、好きな人いるんだ……。
いやいや、まだ本心かは決めつけないほうがいい。あのちゃらんぽらんな舜ちゃんのことだ。うそをつかれた可能性もなくはない。
「晴ちゃん、聞いてた?」
「……うん」
晴ちゃんのところに駆け寄ると、晴ちゃんはなんだか浮かない顔をしていた。
まただ。
夏休みに見た、あの切なげな表情。
どうして、今、そんな顔をするの?
ねぇ、晴ちゃん。
どうしたの? 何を思っているの?
「……晴ちゃん?」
「ま、まさか好きな人がいるなんて、びっくりだよ。……だ、誰なんだろうね」
晴ちゃんは笑った。
ズキリと胸が痛む。
バレバレだよ。そんな作り笑顔。
なんで空元気に振る舞うの。
大丈夫なフリをしないで。
苦しそうなのに、笑顔を向けられてしまったら……どうするのが正しいのか。
私があんなことを聞かなければ、晴ちゃんに無理させずに済んだ?
……私の、せい?



