この恋、賞味期限切れ



や、やばい……! 授業中だってこと忘れてた!


顔面蒼白。意気消沈。

しりとりのせいか、現状を表した四字熟語ばかりが脳裏を占める。



「何をしているんですか?」



先生、怖いです。
左の眉をぴくぴく動かさないでください。



「え、えっとお〜……し、しりとりをちょっと」



あはは、と乾いた苦笑を付け加え、できるだけ明るく答える。

ゆっくり着席して場を収めようとした。


が、どうやら通用しないらしい。


先生の表情はひどくにこやかなのに、目つきは鋭くつり上がっている。



「誰とですか?」

「南結人さんとです」



先生の迫力を前に、欺く余裕は生まれない。あっけなく白状した。

隣から「おい!」とつっこまれているが、無視だ無視。隠し通せるわけがないでしょうが。



「そうですか……」



しーんと静まり返る教室。寝ていた生徒が、次々に姿勢を正していく。


なんで起きていた私たちが被害に遭わなくちゃいけないのー!?



「授業中に何してるんですか!! 罰として、今週の金曜日に図書室の掃除をしてもらいます!!!」


「「えええええ!?」」



ピシャーン!と落ちた雷を回避できる技はなし。

軽い抵抗がてら息ピッタリのブーイングをする。先生のどす黒い笑顔を見て、すぐに中止した。



先生は教卓に戻ると、今の今まで雷雨だった教室で淡々と授業を再開した。


私と南のところだけ、未だにザアザア雨。

大きく肩を落として、しょんぼりしていた。