「じゃあこれ借りてくぞ」
「あ、待って!」
「んー?」
ヒリヒリ痛む手をかばいながら背を向けた舜ちゃんを、とっさに引き止める。
晴ちゃんの恋を応援したい。
だから、せめて、少しくらいおせっかいなことをしても……いい?
「舜ちゃんって好きな人いる?」
もっとさりげなく聞こうと考えたけれど、無理だった。突発的に発した問いかけは、思った以上にドストレートに刺していた。
どうやら晴ちゃんにも声が届いたようで、こちらを困惑した様子で見てくる。
これくらいならセーフ? ギリギリアウト? 要らないお世話だった?
でもこれは、私も知りたかったことなの。
あれだけモテて、常に女の子を侍らせている舜ちゃんだけれど、本命はいるのかな。
「……なんで?」
イエスかノーか、返ってくる答えはどちらかだと予想していた。
実際に返ってきたのは、答えではなく質問。予想が外れた。
「なんでって……、き、気になるから」
「ふーん」
「で、いるの? いないの?」
意味深な笑みをこぼしながら、舜ちゃんは私を正視してくる。
舜ちゃんのうすい黒の瞳に、私の表情がはっきりと映っている。
そのせいだろうか。
いつになく真っ直ぐだから、ほのかに緊張する。



