この恋、賞味期限切れ




始業式後、教室に戻るとHRが始まる。先生が堅苦しい話を長々と語っていく。


私は先生そっちのけで、窓側のほうを見つめた。


前とはちがう席。

遠いところに、南がいる。


南も真面目に話を聞いていなかった。窓の外に広がる空をぼうっと眺めている。

絵の具をたらしたような、青々とした空。気持ちよさそうに流れゆく、白い雲。快晴だ。


晴れた日の白んだ光が、形の整った輪郭を透かしている。


南。ねぇ。南。

空を仰いで、何を思っているの?


遠すぎて、今どんな顔をしているのかわからない。ただでさえ、表情が光に飲み込まれつつあるというのに。


もどかしい。

苦しいよ。


どんなに見つめても、嫌うところはどこにも見当たらない。

それどころか気になって仕方がなくて。

どんどん想いがふくらんでいく。



夏休み明け早々、自覚させられる。


あぁ、私、こんなにも。

キミが好きなんだね。



「松井、南!」

「「は、はいっ」」



突然、先生に指名された。


な、な、何ごとですか!?

びくうっとする。一拍遅れて返事をした。



「話、聞いてなかっただろう?」



ど、どうしてわかったんだろう!?


ロボットのようにギクシャクとしながら首を横に振ってみる。

南もなんとか切り抜けようとするものの、すぐに嘘を見抜かれてしまった。


ギクリッ!!

先生、するどすぎ! なんで嘘だってバレたんだろう!? 挙動不審すぎた!?



「二人そろって夏休みボケか? 罰として、放課後残って雑用をやらせるからな。覚悟しとけよ〜?」

「「……はい」」



二学期初日からツイてない。いきなり雑用をさせられるとは。やだなあ。


と、思ったのは、最初だけ。

最悪な気分は、すぐに最高なものへと変わる。


席が離れても、怒られるのは変わらない。しりとりをして怒られたあのときに戻ったみたい。

なんだかなつかしい。また二人して叱られて、罰を課せられてしまったね。


南と一緒にいられる。
南と過ごす時間が増える。


放課後が楽しみになる。雑用はちょっと面倒だけど、南といられるならなんでもいい。

……って、考えちゃうのは、いけないこと?


賞味期限切れのこの恋に、試練を与えるほうが悪いんだ。偶然にしては与えすぎだ!


いつまでもこの恋とさよならできないよ。