風邪を引いたのはあいつのせい




ぼんやりとまるで夢の中にいるようなぬるま湯から一気に熱湯をふりかけられたような気分。例えるならそんな感じ。


反射的に掴まれていない左手で相手を押しのけようとしたけど何度も言っていたようにわたしは病人で相手は元気な男子高校生。つまりは歯が立たなかったわけで。


ツツ、と手首の内側、柔らかい部分がなんとも言えない力加減でなぞられる。


そんな微妙な指に対して唇は驚くほど力強くグイグイ迫ってきて頭が沸騰しそう。



「、はぁ、んぅっ」



冷たい舌がわたしの舌を絡め取り上顎をなぞる。冷たい体温がじわりとわたしの熱と溶け合った。


そのまま逃げるように舌を引き抜いた久我は見せつけるようにペロリと唇を舐める。それが食事中の肉食獣を彷彿とさせてゾクリとした。



「なに、を、」


「俺が風邪もらったんだから早く調子戻して学校来いよな」



べっ、と舌を出して悪戯に笑う久我に全身が燃えたような錯覚がした。



「このっ」


「ばーか、効くかよ」



ひょい、と上半身を上げてわたしの手をあっさりと避ける久我に苛つきが増す。



「いいからさっさと寝ろ、んで学校来い」



ペチリと額を叩くので反射的に目をつぶってしまい、次に目を開けたときには布団が目前に迫っていて「ぶっ!」と思わず間抜けな声が出た。


それを見てケラケラ笑う久我。殺意。