すると憲康も運転席へと滑り込んで、車はエンジンがかかったのか
静かに動き始めた。

ハイブリット車独特の感覚。



静かな車内に広がっていくのは、秋弦君や奏音ちゃんのオリジナル曲。



「まぁ、車の中でも仕事してたんだ」

「時間が足りないからね。
 けど今は……」


そう言って運転しながら、ボタン操作で音楽を切り替えていく。


サウンドは、有名な洋楽へと切り替わっていく。



「今度、これの編曲を任せて貰えるようになったんだ」



っと運転しながら嬉しそうに教えてくれる憲康。
ったく、子供みたいなんだから。



子供みたいに無邪気なのに、
しっかりと大人な部分は抑えてる。


信頼できるし守られてる実感もあるのに、
何故か私も守りたくなっちゃう。




ずっとずっと……思い続けてる感覚。




だから音大を出て、私は彼を支えるために
この教室の講師として働くことを選んだ。




「さぁ、到着だよ。
 美佳」



そう言って滑り込んだ駐車場の正面には、真っ白なお洒落な建物。



憲康は私の助手席のドアを開けて、手を差し出すと
そのまま真っ直ぐに建物の中へと入っていく。


大きなシャンデリアが飾られた天井。

天井には天使の絵が柔らかに描かれていて、
足元は真っ赤なふかふかのカーペット。


そこで食事をしてる人達の服装も、ドレスアップしているみたいで
なんだか私には場違いな気がして。



「もう、こんなところ来るならなんで最初にいってくれないのよ。
 もっとお洒落してきたのに」

「大丈夫。
 気にしてるのは美佳だけだから」


そう言って憲康は更に奥に入っていく。

中から優雅に姿を見せたスタッフは、
一礼して憲康に話かける。



「お待ちしておりました。
 大田さま、お席までご案内します」


そう言ってスタッフが先導する後を私はゆっくりとついて歩いた。




店内の中央にはエレクトーンが一台とピアノが一台。