「何?」

「開けてみなよ」



そう言って手渡された紙袋の中身は、小さなアクセサリーケース。

そのケースを取り出してゆっくりと蓋を開けると、
その中から指輪が見つかる。


「俺はずっと奏音を待ってた。
 この10年ずっと。結婚しようよ」


秋弦のストレートな想いに、私はゆっくりと頷くと
アイツはぎこちない手つきで、私の薬指に指輪を差し込んだ。





アイツの10年。
私の10年。




擦れ違い続けた時間はもう一度交わる瞬間。





「どうぞ、蓮井さまよりお祝いのお花が届いています」



そんなタイミングですかさず、
薔薇の花束を届けてくれたウェイター。



「またやられたよ。

 この店も、史也が予約してくれてたんだ。
 知り合いの店らしくてさ。
 
 チクショー、面白くねぇー。
 何もかもお見通しかよ」


秋弦は私の隣で、ぶつくさ文句ばっかり。


花束の中に小さな封筒が差し込まれていて、
その封筒を手にしてカードを取り出す。


カードは二枚。



『奏音、幸せに』




綴られる史也君の文字。



もう1枚には


『秋弦、奏音を任せた。
 泣かせるなよ』




秋弦宛のカードを突きつけるように、手渡すと
アイツは頭を抱えなから溜息を吐き出した。







懐かしいような寂しいような想いは浄化して
今は真っ直ぐに目の前の秋弦と向き合おう。



私の全てを受け止めてくれる、
秋弦と一緒に、10年の時を経て大きく動き出す止まっていた時間。



そんな思いを全て込めて、Take off。


羽ばたく時間の向こうへ。
秋弦と奏でる未来協奏曲。





the end