ストレスだけが溜まってる。





そんな生活が更に続いたある日、



その日は教室がない日で私は由美花の家へとお邪魔させて貰った。





由美花の家には、
最新機種の一番上級グレードのエレクトーン。




「ほらっ、お兄ちゃんの相棒触っていいよ。
 ちゃんとメールで許可は貰ってるから。

 最近、奏音がイライラしてるし、エレクトーンに集中してないって
 お兄ちゃんも心配してた」




誠記さんは……ちゃんと見てくれてるんだ私の事。



なのに……史也くんのバカっ!!
もっとちゃんと見て欲しい。


もっとちゃんと教えて欲しい。


私は貴方みたいに演奏したいのに……。



「ねぇ、史也くんと一緒にいる誠記さんだったら、
 史也くんの(煌めきの彼方へ)のレジスト作ってるかな?

 由美花知らない?」


史也くんに言っても可能性が乏しい私は
そのまま由美花にたずねる。



「あぁ、蓮井さんがお父さんの為に作った応援歌だよね。

 あの曲、テンポがあっていいよね。
 なんか始まりの曲って言うか。

 えっと、ちょっと待ってね。
 お兄ちゃん持ってたと思うよ。

 蓮井さんが演奏してるものとはお兄ちゃんが作ったものだから、
 レジストは多少違うと思うんだけどね」



そう言うと、由美花はエレクトーンの傍の本棚の扉をゆっくりと開く。



そこからコピー用紙の譜面を取り出して、
今度は、エレクトーンの前へと近づいて来た。




「えっと……確か、そのボタンだったかな」



そうやってボタンを考えながら押して、
液晶へと、曲名を表示させていく。



【煌めきの彼方へ】


そうやって記された文字の上にカーソルをあわせて
音色とリズムとプログラムをインストール。



手渡された譜面は、史也くんが直筆で描いていたものか、
誠記さんが直筆で描いていたものかはわからなかったけど、
手書きで書かれてることだけは確かだった。


多少、癖のある小さな文字で綴られたおたまじゃくし。



そのおたまじゃくしを辿りながら、最初に軽く両手と足だけをあわせて
次にリズムスタートでレジストを変えながら演奏してみる。



演奏しながら新しい機種は、微妙な指のタッチの差を読み取って
音を表現してくれることをマジマジと感じた。




何度も何度も夢中になって演奏する。





ダメっ。



ここはもっと、史也君は疾走感を出すように演奏してた。
もう少し指先から弾ませないと表現できないよね。