「俺はいいです。今からK市まで帰らないと行けないし、
 母ちゃんが、多分作ってると思うんで。

 遅くまで有難うございました」


ゆっくりとお辞儀をした後、俺は史也の自宅を後にした。
そのまま最寄り駅を目指す。



げっ、レッスン時間大幅に越えて21時って。



慌てて、鞄の中に突っ込んであった
携帯で自宅に電話をして、今まで、奏音の憧れの奴の家で
レッスンして貰ってたことを告げた。


父ちゃんが帰ってきてるから駅まで迎えに行かせるよって
母ちゃんが言った通り、俺が最寄り駅に付いた時には、
父ちゃんの車がロータリーに停車していた。



「ただいま」

「あぁ。
 初日から、ハードだな」

「俺……入学断られるところだった。
 けど史也が助けてくれた。

 せっかくのチャンス貰ったんなら、
 貪欲に吸収してやるだけだよ」





そう……。



今は、まだ未熟でも
俺はアイツを越えてやる。




プリンセスを追いかけるってのは、
何処までも、マジにならなきゃ
やってられないんだ。




待ってろよ、奏音。




すぐにお前が居る場所まで、
辿りついてやるから。