最近のアーティストの有名曲から一曲選んだ楽譜を手にして、
フロッピーからデーターを読み込ませる。




メモリ1を押して、レジストを開いて、
そのままカスタムプレイ。



カウントが始まってすぐにリズム隊が入る。


右手のメロディー。
左手のコード。

コードを基準にした足のベース音。



失敗したら、リズムを止めて
また最初から演奏してみる。




1ヶ月以上も、サボってたら
動かないか。



奏音にしばかれるな。




そんなことを想いながら、
晩御飯のその時まで、
エレクトーンと向き合い続ける。



晩御飯の後、洗い物を終えて
母ちゃんは、携帯電話で何処かへ電話をした。



『直海ちゃん、そっちの暮らしはどう?』




そんな会話から、
相手が奏音ちの小母さんだってことは
すぐにわかった。





『そう。
 奏音ちゃん、あのフミヤ君に……』




あのフミヤって、
あの……例のアイツか?



アイツが今、奏音の傍に居やがるのか?



心中穏やかじゃない雲行に
不安を走らせながら、
母ちゃんたちの会話に耳を澄ます。





『そうかい。
 大田音楽教室ね。

悪いけど、うちのバカ息子も行くと思うから
 また頼むわ』




そんな会話をしながら、
母ちゃんは、奏音の小母さんと会話を終えた。




大田音楽教室。
さっき調べた中に入ってた名前じゃん。

しかも俺、あやうくスルーしそうになってた教室だよ。


そんなことを想いながら俺は晩御飯の後も対して頭には入ってこない
エレクトーンのデーターと睨めっこしてた。







近くて遠いプリンセス。

奏音。





待ってろよ。



俺は簡単に、
お前を諦めるなんてしないから。 



絶対、振り向かせてやるから。