目を覚ました母は、しょげていた。



『あーちゃん、ごめんねえ』

『平気、夕方迎えに来るから、それまで先生の言うこと、ちゃんと聞くんだよ』

『はあい』



落ちた時の記憶はなく、どこに行こうとしていたのかも、覚えていないらしい。

むしろそのほうが普段の母らしく、ほっとした。



「面白いのぉ、これ」

「読んじゃうよね、智弥子もハマってる」



窓の外で、じわじわとセミが鳴いている。

今日も日差しは好き放題にあたりを照らし、なんの変哲もない夏の日。

冷房を入れたリビングに、林太郎の姿があるのだけが、いつもと違う。


ふと、昨日の更新分を読み返していて、気がついた。



「これ、合掌鳥居って、投稿の中には、出てこないんだ」

「ほやな、その部分は“管理人”の創作みたいや」



林太郎の言うとおりだ、投稿には“鳥居”とあるだけで、別に合掌鳥居であるとは、書いていない。

私はしばらく、考えた。

どういうことだろう。

このエピソードを投稿した、たぶん遠くからドライブしてきた人が、珍しい風景だったので描写したんだとばかり思ってたのに。

実際は、管理人のほうが、この地域特有の風景のディテールを書き足していたのだ。



「投稿には、このへんの地域名が書いてあるで、管理人さんが調べたんかもしれん」

「待って、私、前にも何か、気になったんだよね」



なんだっけ、と過去のカキコを探しはじめたところで、視線に気がついた。

林太郎が、じっとこちらを見ている。



「おばさん、いつからあんな、ひどいんや」