うん、とうなずく。

ありきたりだけど、入院してみて、世界観が変わった。



「でも地元にはないから」

「ほやね」

「林太郎の行く大学の、付属を受けようと思ってる」

「え…」

「ちなみに校舎は大学と共有」



え、と言ったきり、林太郎は固まってしまった。

おい、と手を引いても反応がないので、腕にぎゅっと抱きつくと、うわっと声をあげて、振りほどかれる。



「何か言ってよ」

「僕、僕、絶対受からんと」

「まあ、私が先に行っても、待っててあげるよ」



偉そうにうそぶく私に、林太郎は必死な顔で、絶対やよ、とくり返した。

山の上のカラスが、ひときわ声高に鳴いた。

複数の羽音が、慌ただしく響く。



「何騒いでるのかな」

「ネズミでもいるんと違う?」

「いや、もっと面白いことが起こってるんだって、ああいうのは」

「たとえば?」



首をかしげる林太郎に、んーと考えた。



「天狗がいるとかさ」



林太郎が噴き出した。

私も笑った。


カラスが何かを威嚇するように、また鳴いた。


校舎裏に転がっていた、汚れたサッカーボールを、林太郎がぽんと弾いて、器用に何度か足首でリフティングする。

ベコベコや、と残念そうにつぶやくと、一度かかとで蹴りあげて、それを空中でふわりと蹴った。

どこを狙ったのかと思ったら、ボールがぱさっと音を立てて、背の低いバスケットゴールをくぐり抜けたので、笑ってしまった。



「すごい」

「あっちゃん、僕がサッカーしてるの見たことないやろ、今度試合あるで、来て」

「行く行く」

「ほんでお弁当、つくって」

「調子に乗るな」



なんでやのー、とふくれる。