「.......!」

彼女は涙を裾で拭うと、再び空を見上げた。

その姿に不思議と目が離せなくなって見ていると、彼女は僕に気付いてこっちを向いた。

目が合った瞬間、まるでこの世界に、僕と彼女だけになったように思えてしまった。


白い傘をたたみながら、彼女は僕がいるベンチの方に歩いてくる。

「あ....えっと、その....。」

しどろもどろになりながら、頭の中で話す話題を考えようとしたとき、彼女の声は口を開いた。


その声はとても綺麗だけど、消えてしまいそうな声音だった。



「こんにちわ。私は、優雨。君の名前は?」


僕にそう聞いた女の子は、さっきまで泣いていたとは思えないほどの素敵な笑顔を見せた。