課長が腕を組む。
「う~ん、じゃあ今回は間宮に免じて、なかったことにするけど、ちゃんと反省しなきゃだめだからな」
「ありがとう…ございます」
唇を噛み締める。
責任をなすりつけられたことより何より、間宮さんにまで迷惑をかけたことが辛い。
横を向くと、間宮さんは何事も無かったように自分のデスクに戻っていた。
私も席に戻ろうと後ろを向くと、
主犯であろう人たちがこちらを睨みつけている。
椅子に座り画面に目を戻すと、1通のメールが届いていた。
不思議に思いそれを開く。
『誰がなんと言おうと、お前がそんなミスしないことは俺が1番分かっている』
宛名を見なくたって、誰から送られてきたか分かる。
間宮さんの方を向くと、もうパソコンの画面とファイルの資料に集中していた。
間宮さんの優しさが、私を暖める。
***
「auお留守番電話に接続します 合図のあとに3分以内で伝言を…」
スマホを握りしめ、立ち尽くしてしまった。
こんなときに限って、由香里に繋がらない。
給湯室の壁に寄りかかり、少し目をつぶる。
疲れる。
抗戦しないことこそ、かなり疲れる。
そして人に迷惑をかけることは、もっと疲れる。
隣を見た時の、間宮さんの真剣な顔が思い浮かぶ。
ほんとに申し訳ない。
今は正規の休み時間ではないので、早く戻ろうと部屋を出ようとした時、
「あれあれ~?北原さん、こんなとこで堂々とサボりですか?」
犯人たちが給湯室に入ってきた。
私は思わず後ずさる。
給湯室と廊下の間にはしきりがないが、そこを先輩方が埋めるように立っている。
「さっきの、なんで間宮さんに助けてもらったの?」
もう名前も分からない、真ん中の人が声を出す。
「もしかして、もうできてんのー?」
奥の子も声を上げて、みんなひとしきり笑う。
私のせいで、
私のせいで、周りの人が悪口を言われてしまう。
私は唇を噛み締め、ずっと下を向いていた。
スカートの裾を握る拳が強くなる。
「ってかなんでいきなり間宮さんの補助とか、いい仕事任せてもらってるわけ?」
せっかく、頑張ってきたものが、
積み重ねてきたものが、
「課長にはもう接待済みなんじゃないのー」
この人たちによってばらばらに崩される。
怒りがお腹を満たしてふつふつと込み上げる。
「おいなんか反応しろよ」
鋭い試すような声に、言い返しそうになったが抑える。
悔しい、悔しい。
「ちょっと生意気すぎるんじゃないの?」
負けるな、負けるな。
私はそれでも下を向き続ける。
「ってゆーかこの子、午前中の打ち合わせでコーヒーこぼしたらしいよ」
「まじで?あのイケメンとの打ち合わせで?」
「ドジっ子気取ってんすかー?」
きゃはははっ
分かりやすい、貶した笑い声。
思わず顔を上げ、睨みつけてしまった。
「…何その目?」
「悲劇のシンデレラ、みたいな?」
そのとき1人隣のコーヒーメーカーからグラスにお湯を出し、こちらに向かって思いっきりかけた。
