課長が企画会議用のホワイトボードにポスターを貼り出す。
普段は噂話に花を咲かせる先輩方も、そんな先輩を冷たくあしらう後輩たちも、この時ばかりは真剣な顔になる。

私が働くホテルのイベント企画課では、千賀ホテルの大規模なイベントホールを使い、毎月、ファンイベントやレストランとの提携フェアなど、さまざまなイベントを実行している。

今月は12月末のクリスマスに合わせ、フレンチのフェアと、大規模のイルミネーションとクリスマスツリーの設置を計画している。

「はい、みんな 聞いてー」
私の憧れである美玲先輩が全体に声をかける。
「これから今月の企画についての担当発表をします。今月は本当に忙しくなると思うので、みなさん集中して仕事にあたってください」
はい、という周りからの返事を合図に、担当場所が指名されていく。

「…さん 北原さん!」
「あっ はい!」
ぼーっとしていて、反応が遅れてしまった。
美玲先輩からフレンチの提携先の名簿が渡される。
「北原さんはこの名簿の方々と連絡をとって打ち合わせしてください。詳細は間宮さんに預けてあるから。以上!」
美玲先輩がいきなり声を張り、それを合図にみんな散っていく。

「北原!おい北原!行くぞ!」
遠くで上司の間宮さんの呼ぶ声がする。

しかし私はその場から動くことが出来なかった。

名簿にある1つの名前に目が釘付けになった。