そのまま石川くんは目を細くして喜美ちゃんを睨みつけたけれど、喜美ちゃんはトイレーと立ち上がるとあたしたちを二人きりにして教室を出ていく。
ぐっじょぶ喜美ちゃん。なんて気の利く良い子なの。親友が過ぎるよ!
「……じゃ、俺もこれで」
「待って待って石川くん、もうすぐで夏休みだよ? 会えなくなっちゃうよ? プールの予定くらい入れとこうよ!」
「それはラインで」
「石川くん返信くれないじゃん!」
ち。面倒なのにつかまった。という顔をしている石川くんだが、もとはと言えば、石川くんから話しかけてきたのだから、本気で嫌がってるということはない。と思ってめげない。
そそくさとあたしから離れていこうとした石川くんの左手首をがっちりつかんで、逃げられないようにじっと目を見つめた。
ものの、あだめだ、かっこよすぎて眩しい、目がくらみそう。
石川くんの神々しさにちょっと怯んだすきに、石川くんはあたしの手をそっと払いのけると「ごめんね、急いでるから。また誘って」と嘯いてとっとと自分の席へと戻って行った。
つい先月まで隣の席だったのに、初めての席替えでまんまと席が離れてしまい、今あたしたちは机4個分はさんだ距離にいる。
急いでるって……! 急いでるって……! 自分の席で突っ伏し、寝る体制をとった石川くんを見てこの野郎と思う。
ちょっと話してくれるくらいいいじゃないか……!

