「石川くんと海に行きたい……」
「そして?」
「悩殺したい」
「あははははははははははははははははは」
「喜美ちゃん!?」
「妄想が過ぎるよーのんちゃん。ぺちゃぱい尻なしが何を」
壊れたように一定のリズムで笑い声をあげた喜美ちゃんは、一瞬で真顔に戻るとふうと溜息を吐いた。
え、何さっきの笑い声。ロボットみたいだったけど! 怖かったけど!
そして堂々とディスられた。本人目の前にいますけど。
「妄想ってなんで? プールでもいいんだよ、あたしの水着姿で悩殺できればいいの。もうすぐ夏休みでしょ? だからさー、暑いし。誘ってみよっかなって。石川くんの脳を殺したい」
「悩殺ってそういう意味じゃないよー。漢字も違うし」
「あ、石川くん」
間延びした声につっこみをいれられ、振り向くと愛しの愛しの石川くんが、パックの牛乳にさしたストローを加えながら、えげつなくドン引いた顔でこっちを見ていた。
いやん恥ずかしい。聞かれてた?

