ただしいあなたのころしかた




トーク履歴も、昨日の朝、あたしが一方的に送った猫のキャラクターのおはようスタンプを既読無視されて終わっている。

石川くんを好きになってから毎日欠かさなかったおやすみとおはようの挨拶も、昨日の朝で止まっている。

ちなみに土日祝日はこれに加えその日の出来事を一方的に定時報告したりしてたけど、石川くんから感想や返信をもらったことはない。

あたしの自己満足でやってたことだから、全然気にならなかったし、むしろ既読の文字がついているのを確認できるだけで幸せだったからいいんだけど。

電話はちょっとハードルが……! ていうか石川くんの低い声が耳元で直に囁かれるようなものじゃん。そんなの死んじゃう。ドキドキして心臓が耐えられる気がしない。


「あ、もしもし石川くん?」

「喜美ちゃん!?」

「……うん、そう。今のんちゃんと一緒、声でかいよねーすぐ分かっちゃうよねー」

「石川くん!?」


あたしが一人でうじうじ葛藤している間に、自分のスマホで石川くんに連絡を取ったらしい喜美ちゃんが、ちょっとうるさいよと視線だけであたしに訴えてくる。


「待ってねー、今ねーのんちゃんが、石川くんに聞きたいことがあるみたいで」

「いやっ、あの、喜美ちゃん……!」

「……えー、……そう? お願い、ちょっとだけだって」

「喜美ちゃんほんと、あたし無理……!」

「うん、んー、……うん、じゃあかわるねー」

「喜美ちゃん……!」


ほら、と、喜美ちゃんのピンク色のケースがはめられたスマホが上向きで向けられる。

画面には、石川くんとのラインの通話画面。間違いなくつながっている。