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「――というわけなんだけど、喜美ちゃんこれすなわちどういう展開?」

「のんちゃんそれは私が聞きたいよ」



あんぐりと口を開けた喜美ちゃんが首を傾げたあたしを訝しんだ。


謹んで交際開始のご報告をさせてもらったところ、喜美ちゃんはやっぱり理解できていないようで、ちょっと整理させてねと目を閉じた。


当人のあたしでさえよく分かっていないのだから、当事者でない喜美ちゃんなんてもっと意味わからないだろうねうんうん。


朝いちばん、登校している生徒もまばらな教室で、うんうんと唸る喜美ちゃんを傍目に、窓の外に校門を通る石川くんを見つけて思わず立ち上がった。



「マイスイダーリンだ!」

「え、のんちゃんそのテンション合ってる……?」

「合ってる……よね? 正式にあたし彼女だもん……ね?」

「すごい自信ないじゃん」



そわそわして居ても立ってもいられない感じがしたけど、とりあえず席に座り直して窓の外の石川くんを眺めた。


こっちに気付く気配はないけど、着実にこの教室に向かってる。そりゃそう。同じクラスだもんね。



「……どうしよう、緊張してきた……」

「ていうか本当に付き合ったの? のんちゃんの夢とかでなく?」

「本当だよ! と、思うけど、……え? 夢の可能性あるかな?」

「わあすごい自信ないじゃん」



私まで緊張してきた、という喜美ちゃんを尻目にいつ教室に石川くんがくるのか、教室後方の扉に意識が集中してしまう。