「……え? 石川くん、あたしのこと好きになったの?」

「いや全然全く」

「全然……?」



そんな即答しますか? もうちょっと悩んでくれてもいいのでは。


そしてさっきの話と大きく矛盾しますね?


ああそうか。ということは、付き合うっていうのが冗談? だね? さては。


必死に考えをめぐらしながらも、ずっと待ち望んでいた言葉のはずなのに、いまいち胸が躍らないしあたしは冷静だった。


石川くんが何を考えているのか分からないのはいつもだけど、今回はそういう問題じゃないレベルで分からないな。


なんて答えたらいいのか分からなくて、しばしお互い無言で見つめ合う。



「あの、あたしは石川くんが好きだよ」

「うん」

「結婚してくれますか?」

「嫌だよ」

「じゃあ付き合うのは……?」



石川くんはふと息を吐くように笑う。


切れ長の目は相変わらず涼し気だけど、いつもみたいな冷ややかな感じではない。


あたしも、いつもみたいにふざけた調子で聞けたらよかったんだけど、妙な雰囲気に声が上ずって気まずさに拍車がかかった。



「いーよ」



そして石川くんが彼氏になった。