ただしいあなたのころしかた




「明石さん顔可愛いじゃん」

「えっ」

「俺のこと好きって公言してるから告白されないだけで、モテるでしょ」

「えっ」

「ひどいな。利用するのヤメテよ」



石川くんは僅かに口角を上げて、あたしから目をそらさない。いつもはすぐ無視するくせに。今日はよく喋る。


そして妙なことを言う。表情からも言葉からも真意は読み取れない。



「大ちゃんは、俺のこと好きって言ってる明石さんをわざわざ好きになって告白してくれた人じゃん」

「……」

「普通、あんな大っぴらにあけすけに好きな人に猛アプローチかけてる女の子に告白できないよ。すごい勇気じゃん。別に羨ましくもなんともないけど」

「……」

「相当な愛だよね?」

「……あたしが、石川くんを利用して、他の人からの好意を試してるとでも?」

「違うの?」



そんなわけない。あたしが石川くんを好きになったのは3か月前、初めて会ったときから、よろしくねのよのyの発音を聞いた時から。


そういう石川くんの方こそ、あたしを試しているような感じがした。


淡々と話すから、どういう感情でどういう意図でそんな話をするのかさっぱり分からない。これが恋の駆け引きなのだろうか。だとしたら難しすぎる。