ただしいあなたのころしかた




「――というわけで石川くん」

「君たち俺の意見は一切聞かずに勝手に決めたね」

「お向かい失礼しますね」

「君ら、俺の都合は全く気にせずに盛り上がってたね」

「というわけで石川くん、あたしたち一緒に過ごしましょう」

「すごい迷惑」



はあと溜息をついた石川くんのテーブル席に、自分のコーヒーカップとケーキを持って移動した。


店員さんには声掛けし、あたしたちが元居た席は片づけてもらう。不思議そうな顔をされた。まあそりゃ不可解だよね。



「――どう思う? 石川くん」

「すごい迷惑」

「今の状況じゃなく」

「なに」

「飯田くんのこと!」



思わず力が入って語気が強くなる。


石川くんは目線を本に落としたまま、うるさそうに眉を顰めた。


すっかり冷めてしまったコーヒーをすすりながら、石川くんを見つめるけど、一向に目は合いそうにないな。



「どうって?」

「あの人、あたしのことが好きらしいの。です。よ」

「知ってる。教室で大騒ぎしてたでしょ。なんならさっきの会話も聞こえてたし。てか何その喋り方」

「……嫉妬?」

「するわけないね」



ハッと笑った石川くんは、軽蔑した目でようやくあたしの方を見て、自身のカップに口をつけた。


その見た目はカフェラテ。ずいぶん可愛いものを飲んでいるらしい。