さらりと、好きって言われた。可愛いとも。
二人で遊んでおきながら、あたしが飯田くんに向き合えなかったのが悪いのに、怒るわけでもなくあたしの気持ちを優先させてくれたのか。
さすがに申し訳ない気持ちで胸がいっぱいだけど、飯田くんは常に控えめな笑顔で、あたしに気にしないでと何度かおどけて見せる。
「待って飯田くん、」
「気にしなくていいから、また今度一緒にお茶しよ?」
「飯田くん、……あの、せめてお金……!」
「大丈夫。次会った時、おごってくれたらいいから。口実にさせてよ。また二人で会う」
いいのかな。
いいのかな。
お会計を終えた飯田くんの元へ、お店の出入口までついて行ったけどこれ以上引き留める言葉も見つけられず、飯田くんの気遣いを無下にしていいものかどうかも分からなくて、結局あたしは引き下がるしかなくなる。
ケーキもコーヒーも残したままだから、このまま飯田くんについていくことはできない。
「……あの、ごめんね」
「謝んなくていいから。ていうか、俺のこと気にして石川にアプローチしづらくなってほしくないし!」
「そんなこと」
「石川への気持ち超えて、俺のこと好きになってほしいと思ってるんで」
飯田くんはそう言って、にこっと屈託なく笑う。
優しい人。
「……ありがとう」
「いーえ。また、学校でね」
手を振る飯田くんにあたしも手を振り返して、カフェを出ていく姿を見送った。

