ていうか石川くんのことが気になって飯田くんに集中できない。
まさかここ、石川くんの行きつけだったの?
放課後何しているのか、前に聞いたことがあったけどはぐらかされるし、帰りは一目散に教室を出て行ってしまうから、まさかこんなところで会えるなんて思ってなかった。
カフェで本を読む石川くん、絵になるなあ。
「明石さん」
うっかり見惚れていたら、少しだけ不機嫌そうな声に呼ばれて慌てて石川くんに背を向ける。
「あ、ごめん飯田くん、」
「……いや、こっちこそ、……ごめんね、さすがに石川がいる前じゃ話せないよね」
「う、うん」
飯田くんはあたしが石川くんが好きなことを知っているので、さすがに困り顔でため息を吐いた。
ついているのか、ついていないのか。石川くんに会えるのはもちろん嬉しいけど、タイミングが悪いよ。今日じゃないよ。ああもどかしい。
「食べたら出ようか」
「うん」
「あ、でもゆっくりでいいからね」
「うん」
一口が大きい飯田くんのケーキはもう残り半分もない。
あたしを気遣う彼はにこりと笑ってくれるけど、あたしが好きな石川くんは一体どんな表情をしているのだろう。

