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「明石さん!」

「……あ、飯田くん」

「ごめんね? 待った?」

「ううん、全然。今来たところ」



微妙に声が上ずる。


放課後、飯田くんと軽く遊ぶことになった。


なんでも、自己紹介がてらアピールさせてほしいとのことで、あたしはそれを受け入れた。けど、いざ改めて会うと緊張する。


予想外の告白からまだ数時間しか経っていない。


待ち合わせした靴箱の前へ、慌てた様子で走ってきた飯田くんはあたしの返事を聞くと安心したようにぱっと顔を綻ばせた。



「なら、よかった。明石さん、やっぱり優しいね」

「えっ、いや……」



無邪気に笑う飯田くんになんて答えたらいいか分からず言葉に詰まる。


あたし、特別優しいわけじゃないけど。本当に今来たところだし。でもなんか褒められたみたいで悪い気はしない。


石川くんとは正反対な人だなあ。と、無意識に比べてしまう。



「……どこ行こっか?」

「学校近くにカフェあるんだ。ここの生徒とは滅多に会わないし。そこでもいい? チョコレートケーキがすごい美味い」

「へー、すごい。よく行くの?」

「たまに。チョコレートケーキがすごい美味いからね」



二回言った。チョコレートケーキ、好きなのかな。それとも、ほんとに2回言いたくなるくらいすごい美味いのだろうか。


にいと大きく口を開けて笑った飯田くんにつられてあたしも自然と笑顔になる。