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「は? 付き合ったの?」



あんぐりと口を開けた喜美ちゃんは、信じられないと言って軽蔑したような目であたしを見る。


そんな目線にも割と慣れているのであたしは動じないけど。



「いや、まさか! 付き合ってないよ!」



それを受けて弁明するけど、喜美ちゃんの開いた口はまだ開いたままである。


飯田くんの告白を、彼に言われるまま保留にして教室に戻ったけれど、喜美ちゃんに言わせるとあたしの対応は間違っていたらしい。



「のんちゃん、あのねえ? 石川のことが好きなんじゃなかったの?」

「え? 好きだよ?」

「好きなんだよね? じゃあきちんとその場でお断りしなくちゃ……」

「いやでも、だって、返事はまだしないでって」

「それでもよ。保留になんてしたら、相手の人も可哀そうじゃん」

「そうかな、でも、飯田くんの言う通り、この先もしかしてあたしが飯田くんを好きになる可能性もあるっちゃあるくない?」

「あるの!?」

「ありますよ」

「あるんだ!? 石川は⁉」

「そりゃ、今は好きだけど、この先は分からないよ。現に少し、飯田くんのこと、いいなって思ったし」



あたしと石川くんは付き合ってない。なんなら何十回と振られてる。片思いだ。


それなのにいつまでも永遠にあたしのことを好きにならない石川くんのことをあたしだけがいつまでも永遠に好きでいて、他の男子を好きにならない、なんてこと、言いきれない。し、言い切る必要がないと思っている。あたしは。