気まずい。気まずすぎる。



「あ、あの、告白の返事なんですけど、」

「あ、ごめん! いや、あの、今答えないで!」

「……え」

「明石さん、好きな人いるよね? 目立ってるから知ってる」

「うわ、いや、……お恥ずかしい」



知ってたんだ。私が石川くんに猛アタックしてること。あたしが知らないこの人は。


我ながら普段わき目もふらずに石川くんに愛を叫んではいるけど、いざ他人に口にされるとなんとなく恥ずかしくて体温が上がった。


普段恥ずかしげもなく石川くんにアピールしといて何をいまさらと自分でも思うけど。それとこれとは別みたい。



「好きだからね、明石さんのこと。見てたら気付くよ。……ていうか、よっぽど他人に興味がない人じゃない限り、同じ学年の人は皆知ってると思うけど……」

「お恥ずかしい!」

「あ、ごめんね」



わっと両手で顔を覆ったあたしのうるさい仕草にもかまわず、飯田くんが慌てて申し訳なさそうにしているのが指の隙間から見えた。


爽やかな大型犬みたいだな。犬に例えるのってナイかな?



「……あの、とにかく、俺、今すぐ付き合ってもらおうとは思ってなくて。……いや、もちろん付き合えたら嬉しいけど。とにかく、とりあえずは知ってほしかったっていうか」

「は、はあ」

「石川以外にも、男がいること」

「……」

「しかも、明石さんのことめっちゃ好きでめっちゃ大事にする男」

「……」

「俺のこと、なんですけど」



いかがでしょうか。と、控えめだけど少し冗談めかして笑った飯田くんは、あたしから目をそらさない。


だからあたしもそらせない。


体温が上昇して、焼け死にそう。


心臓がどきどきして、なんか死んじゃいそう。


これも多分ときめきなのだ。