隣のクラスの、飯田ですさん。間違えた、飯田さん。ただの飯田さん。
短い黒髪が爽やかで、ぱっちり二重でどちらかといえば愛嬌のある顔立ちだけど、背が高くてがっちりしてる。
そういえば、こんな人、廊下とかで見たことがあったかもしれない。でも、多分、話したことはない。し、名前も初めて聞いた。……いや、去年石川くんと同じクラスだった人の中で、飯田という苗字を聞いたことがあるような気がするかもしれない。
あたしの記憶の中で、かもしれないの域を出ない、飯田くん。
「あ……、やっぱ、俺のこと知らないよね?」
「えっ、あっ、」
「無理しなくていいよ! 俺影薄いし」
飯田くんは冗談らしくそう言うと、ははと声を上げて笑った。
いや、そんなことはないだろう。
これだけ体格が良ければ、目立たない方がなかなか難しい。
あたしが石川くんしか見えてないだけだ。
なんとなく彼に合わせて愛想笑いしたけど、なんて返事したらいいのかわからなくてちょっと微妙な空気になってしまった。

