「みなみは本当は"藤井(ふじい)"に食べてほしいんだよねー?」

にやにやしながら、ノートを写していたはずの葉月が私のほうを見ている。

「ちっ…違うよ!何いってるの!?」

「ほーら、分かりやすいんだからみなみは」

美姫も私の方を見てにやにやしている。

葉月が言う"藤井"と言うのは、私たちの学校の数学教師"藤井涼太(りょうた)"先生のことだ。

藤井先生は私たちのクラスの数学を担当している。

「だからみなみは数学は妙に力入れてるんだよねー?」

「うっ…」

私が藤井先生を好きなことは、二人には秘密にしていたはずだった。
なのになぜかバレバレだったらしく、最近は頻繁にいじられる。

「みなみは分かりやすいのよね。葉月もそう思うでしょ?」

「本当にね。私たちには隠したって、お見通しだからね」

私は顔を赤らめて下を向く。
私って、そんなに分かりやすいのかな。