さよならは言わない


「勝手にシャワーを借りて悪かったな。絵里はシャワーは浴びないのか?」

「私はいいわ。そんなに汗かいてないの」


尊がいるのに裸になってシャワーを浴びる勇気はない。

尊が帰った後にゆっくりお風呂に浸かるからそれで十分よ。

すると、尊は私の額に手を当て前髪をすくい上げた。


「十分に肌が湿気っているけど? 首筋だって肌に汗が光っているよ?」


触れられる首筋に体がビクついて強張ってしまう。

私が怖がっているように見えるのか尊は私から離れてくれた。


「俺はそんなにも信用されていないんだな」


尊はそう言うと茶の間の方へと行った。

尊を信用出来るも何も私だって信用されていないのに。どうやって信じあえるのか私には理解できない。

尊に嫌われているはずなのに、何故、昔の恋人ごっこをしたがるのか私には謎だらけだった。


「どうして、尊は私の事嫌いなのにこんなことするの?」


尊は下着を手に取るとバスタオルを外した。

目のやり場に困った私は尊に背を向けた。

すると、尊は後ろから私を抱きしめた。尊の肌の熱が私の服を通して伝わってくると思わず尊の腕を払いのけようとした。

けれど、尊の力強い腕に拒まれ私はそのまま尊の逞しい胸に抱きしめられた。


「分かるか? 俺が今、絵里を求めているのが?」


ぴったりと着けられている尊の体が私の体に教えてくれる。今の尊は私を欲しがっていると。