さよならは言わない


「今日は専務の指示で笹岡さんはこのまま自宅療養に入ることになっている。だから、俺が家まで送るよ」

「大丈夫です。一人で帰れますから」

「いや、専務の指示だし、君を一人帰したくないから。心配なんだ」

「ごめんなさい。一人になりたいの」


送ると粘られたけど私はこれ以上迷惑をかけられない。

何時ものように電車で帰る。

病院では血液検査の結果が出るまでの間に点滴をしてもらった。だから、かなり気分はいいのだからこのまま一人で大丈夫。

私は大丈夫だけど、あの会社は大丈夫じゃすまされなさそう。

あの会社は契約金が高かったからこの仕事を失うのは痛いけど、でも、こんなことになるなら契約破棄される方がいい。

いいえ、私から断るべきだった。

まだ、意識がしっかりしてる内に断ろうか?

このまま会社へ出向く?

点滴をしたとは言え電車に揺られるだけでやはり辛い。

早く帰って布団にダイブして眠りたい。


自宅へ戻るなり私はそのまま美香の仏壇の前に倒れ込むように眠ってしまった。



一方、会社へ戻った森田さんは指示通りに専務室へと向かった。


「どうだった?」


「診察は彼女は受けましたが、詳しい結果は他人の私には判りません。ただ、このすぐ近くの総合病院の心療内科の紹介状をもらっています」

「心療内科?! 彼女は精神を病んでいるのか?」

「詳しいことは心療内科で話を聞くことです」