「笹岡、じゃない、松崎、ちぇっやりにくいな」
ぶつくさ文句を言うのは森田さん。
私はお産休暇に入るギリギリまで森田さんの仕事を手伝っている。
と言っても私の後任として派遣社員を入れているのでそのアドバイス的なことをしているだけ。
お腹が目立つようになってからはあまり手伝いもしていない。
私の体を心配した尊が仕事をやめさせたがったから。
でも、程よい運動は必要だよと、少しだけ仕事をすることを認めてもらった。
「森田さん、どうしたんですか?」
「来週までにこれが必要なんだ。徳永に説明してくれないか? 俺はこの後、出張に出るんだ」
徳永さんと言う人が私の後任として入った派遣社員。
仕事はそこそこできる人ではあるが慣れない作業に時おり躓くことがあるので私がサポートしている。
「いいわよ、これ面倒な作業よね」
「あ、いたいた。絵里、まだここにいたのか。今日は午後からは帰る予定だったろう」
営業課へと私を探しにやって来た尊は私の手に持つ資料を取り上げ森田さんへと返していた。
「明日は美香の命日だろう。仕事するんじゃない。森田も今日と明日は絵里をあてにするな」
「しかし、仕事が」
出張にでる森田さんの仕事をカバーする人がいないのだから、せめて今日だけでもと思っていたら江島さんが森田さんから資料を取り上げた。



