さよならは言わない


産婦人科の検診ではお腹の子は順調でこのまま予定通りの出産になりそうだ。

出産予定日まであとわずか。

美香の弟が生まれる。

弟が生まれたらお姉ちゃんの話をしてあげたいと思った。


「松崎さん、看護師が驚くようなモノを見つけたんですが見ますか?」

「内容によりますが……」


尊も私も一体何なのだろうかと思っていたら、私が美香を出産した後のビデオ映像が見つかったと言うのだ。

私は美香を出産した病院で今度のお腹の子も産むことに決め、その病院へ検診に来ている。

美香の突然死に関わった先生に妊娠生活の指導を受けた方が安心して出産に臨めると思ったからだ。

しかし、美香がビデオ撮影をされているのは私は知らなかった。

当時の看護師の中にビデオ撮影の好きな人がいて偶然にも美香の映像が残っていたのだ。

私達は別室で美香のビデオを見せてもらった。

小さいけれど勢いよく泣く美香の姿が写し出されている。


「ああ、なんて可愛い子なんだ。俺の娘だ!」

「そうよ、尊と私の娘よ。皆にも見せてあげたい。お腹の子にもお姉ちゃんがいたことを教えてあげたいわ」

「お嬢さんの部分だけをカットしてますから差し上げますよ」


意外な申し出に私も尊も涙を流した。

いつまでも亡くした子を悲しむのは良くないけれど、初めて我が子に触れることが出来るような感覚に喜びさえ感じてしまう。

私達は紛れもなく美香の親なのだと。

美香はわずかの間だったけれど、この世に存在していたのだと皆に祝福され生まれたのだと美香に伝えたい。