さよならは言わない


尊が戻ってくるのを待つ友美の態度はどうみても親友になろうという態度ではないし、分かり合おうと言う態度でもなかった。

尊を憎む眼つきのまま友美はそこに居た。


「俺を信用していないって顔だね」

「絵里は5年前、妊娠してたのにも関わらず捨てられたのよ。それも、最愛の男に騙されて」

「俺は騙してはいない。騙されたのは俺の方だ」

「絵里はあなたをどんなに想っていたか知らないの? あの子はねあなたの子を妊娠してどんなに嬉しそうにしていたかあなたは知らないでしょうね?」


尊は表情を歪ませソファーに腰かけた。

そして、拳を握るとまるで憎しみでも振りかざすかのように自分の膝を叩いた。


「俺は絵里を愛していた。絵里に裏切られてもそれでも愛していたんだ」

「絵里は裏切っていない。もし、裏切りと言うならそれは妊娠を隠した事よ」

「そうだ。絵里はわざと妊娠し、妊娠をたてに俺と結婚し松崎の家の妻の座を狙っていた女だった。絵里が欲しかったのは俺じゃなく妻の座だったんだ」

「絵里の何を見てそんな考えになるのか分からないわ。あの子ほど純粋な子はいないってほど純粋だったわ。だから、あんたに捨てられて子どもまで失くして絵里は死ぬような目にあったのよ!!」


友美は尊の裏切り発言に呆れていた。

本気で愛しているなら、その愛する女の言い分を最後まで聞いてやれって言いたかった。

友美はいつも私にそう言ってくれていた。

本当に私への想いがあれば私の言葉を聞いてくれると。私を信じてくれると。

それをしないのは本気ではなかったと。愛していはいなかったと。