さよならは言わない


尊の優しい眼差しに私の涙は止まらなかった。

そんな私の涙を尊は自分の指で拭ってくれた。

優しい尊に私は幸せで一杯だった。

これが偽りの優しさとは思いたくなかったし思えなかった。

だから、余計に涙が流れてしまった。


「絵里は少し興奮している。絵里を心配して来てくれたのは感謝するが今日のところは帰ってもらえないだろうか?」

「いいの、友美には話さなきゃいけない事があるわ」

「だったら俺が話をする。絵里は疲れているんだよ。ベッドで休むんだ」


尊に抱きかかえられると有無を言う暇なく寝室へと連れて行かれた。

そして寝室へ運ばれるとそのままベッドへと寝かされ布団を掛けられた。


「武田には俺から説明する。安心して眠るんだ」

「友美には何を言うの?!」

「大丈夫、俺達が愛し合って結婚するのだと言うよ。ここへ絵里が来た理由と同じく俺達は愛し合っている」


尊はそんなウソを平気で何故言えるのか不思議だった。

私は尊への愛は本物だったしずっと愛していた。

だけど、尊は私と同じ気持ちを抱いて過ごしていたはずないのに何故あんなセリフが言えるのか私には到底理解出来なかった。


尊がリビングに戻ると友美は仏壇の前に座ったままだった。