さよならは言わない


尊の舌打ちする音が聞こえた。

間違いなく尊は私の懇願に舌打ちをした。

でも、それでも、私の願いを聞いてくれた尊は私をベッドで抱きしめてくれた。

体中にキスをしながら尊は私を快楽へと導いてくれた。

長い年月が必要だった。再び尊と心を通わせるのには。

でもこれは心ではなくただ体を重ねただけ。愛を交わしたのではない。

ただ、二人の気分が高まり交わっただけ。

だから、事が終わると尊に抱きしめられ眠っていたけれど尊には何も言われなかった。

「好き」とも「愛している」とも尊の口からは出てこなかった。

私の耳に聞こえていたのは「くそっ」と言う投げやりな言葉と舌打ちした音だけだった。

こんな結果になるのなら抱かれなければ良かったと思った。


眠っている尊を起こさないようにベッドから下りると浴室へと行きシャワーを浴びた。

体のアチコチに尊のキスの痕が残っていた。

まるで全身に薔薇の花弁が咲き乱れているようだ。

体を鏡に映しだし自分の姿を見るとその美しいまでの花弁に恥ずかしくなってしまった。


「やだ。こんなところまでキスマークが?」

「どこにあるんだい?」


鏡を見ていたら浴室へと尊がやって来た。思わずバスタオルで体を包み込み急いで浴室から出ようとした。

すると尊の腕に掴まれ浴室へと引き戻された。


「絵里、バスタオルは外して良く見せてごらん」


尊は我慢していた欲望を必死に保つために理性を働かせていたが、その理性は今の尊には当てのならないものになっているようだ。