さよならは言わない


「いや、まだ我慢はできる。結婚式の準備を始めるからこれから忙しくなる。だからと治療を怠るな」

「分かっているわ」


私にとっての治療は尊と幸せな生活を送ることなのに。

尊が一言私を愛していると言ってくれればそれで完治出来るのに。

尊は私を大事に扱ってくれるけれど愛してはくれない。

美香には愛情を示してくれるけれど私へは感じられない。

それが辛くて益々薬の量が増えそうだ。


「そんな顔をするな」

「え?」

「絵里の辛そうな顔を見たくない」



尊は私に何を望むの?
私にどうして欲しいの?

私には尊が私とどんな未来を共にしたいのか想像もつかない。

尊とこんな状態が何年も続くなんて考えられない。

尊とは笑いの絶えない温かい家庭を夢見ていたのに私の夢は夢で終わってしまうの?
終わらせたくない!


「絵里、泣かないでくれ」

「え?」


私の目からはいつの間にか涙が流れていた。

尊との未来が不安になると胸がとても苦しくなって悲しくなる。

だから、自然と涙が流れていた。


「絵里、俺が絵里を幸せにするから。泣かないでくれ」


抱きしめられる尊の腕に今でさえもとても心惹かれ、温かい尊の胸に心は落ち着いていく。

尊がこんなに欲しいなんて今まで思えただろうか?

尊に抱きしめられるのが私はこんなにも好きなのだ。

離さないで欲しい。


「お願い、尊…………」


尊の胸の中で眠りたい。