さよならは言わない


マンションへ戻ると尊に肩を抱き寄せられ支えられるようにして部屋まで行った。

寝室まで一緒に行くと尊は上着を脱ぎネクタイを外していた。


「会社へは戻らなくていいの?」

「今日は絵里の傍にいる。森田には指示を出して来たから大丈夫だろう」

「でも、仕事が」


最近の尊は私に構い過ぎていると少し心配になってきた。尊に関心を持たれるのは嬉しいけれど、だからと仕事を疎かにしている様で周りからの批判を浴びなければいいのにと心配ばかりしてしまう。

そんな私の心配もよそに尊は私をベッドへと横にさせた。

そして着ていたシャツのボタンを外していく尊の手を握りしめた。


「絵里はまだ完全に治っていない。無理は禁物だ」

「自分で着替えるわ」


ベッドに腰かける尊に背を向けて体を起こし、開いたシャツの胸元を握り締めた。

尊は手で前髪を梳くい上げると私の体を掴んでベッドへと押さえ込んだ。


「尊?」

「そういつまでも待てない。だから、一日も早く元気を取り戻してくれ。もう、限界なんだ」


横たわる私を抱きしめ頬にキスをする尊の重みがとても懐かしかった。

頬から額へと優しくキスされるとあの頃のように私を大事にしてくれている?と錯覚してしまう。

錯覚でもいい、尊の優しいキスが欲しい。

もっと尊に触れて欲しい。


「尊、我慢しないで」


私の一言に尊の体が反応し表情は暗く硬いものへと変わっていった。