「尊、やっぱり私達結婚なんて無理よ。いずれ社長になるあなたはそれなりの家の人と結婚すべきだわ」
私の言葉に尊は私の手を握りしめた。
そして、私を抱きしめた。
「絵里、俺を気遣ってくれるのか? だったら俺が結婚するのは君しかいない。美香の父親にさせてくれ。娘のためにも君のためにもそばにいたいんだ」
「尊……」
「絵里、今らさNOとは言わせないよ。今年中には結婚式をあげるよ。出来るだけ早くに、いいね?」
尊の優しい言葉にNOとは言えなかった。
見つめられる熱い瞳に体までもがその熱に犯されそうだ。
私は抱き締められる尊の腕の中で頷いていた。
「あの、娘って、美香って誰ですか?」
尊の話の中に出てきた新たな人物に森田さんが興味をしめしても不思議ではない。
多分、他の誰でも気を引く会話だったはずだ。
「美香は亡くなった私達の子供だ」
「こ、子ども?!」
森田さんは私達が以前からの知り合いだとは感じていたようだが、私達の間でそんなことが起きていたとは想像をはるかに越していたようだ。
「絵里が学生時代に付き合っていてね。その時に生んだ子なんだよ。次の七回忌では十分に弔ってやりたい」
「七回忌?!」
「絵里とは別れられない。だから結婚するんだ。江島のことは誰もが交際していたと思っているだろうが、絵里を失った悲しみを紛らすために何度か一緒に過ごしただけだ。絵里、信じてくれ」
私は尊が誰を選び誰とベッドを共にしても何も言う資格はない。
だから、今は尊の言葉に頷くしかなかった。



