さよならは言わない


「非難? 何故、彼女が非難されなければならない。君は今話してくれたね。絵里の仕事を評価してくれた」

「理由はなんなのですか?」


尊は暫く目を閉じて考えこんだが、組んでいた腕を下ろし一度私の顔を見てから森田さんを見た。

尊の様子に森田さんは緊張が走ったのか、少し緊張した面持ちでいるのが分かった。


「絵里と結婚することにしたんだ」

「結婚?! 彼女と誰がですか?!」

「私だ」


あまりの突然の話に信じられない顔をする森田さんは私の顔を見ていた。

交際は知られても誰の目にも短期間の始まったばかりの交際が何故結婚に結び付くのか、それこそ納得できるものではなかった。


「失礼ですが江島とは長い期間交際されてましたが、それでも結婚には至りませんでしたよね? なのに、何故出会ったばかりの彼女とは結婚するのですか?」



やはり、尊はあの彼女と交際していた。それも長期間?それっていつからなの?
彼女もあの時の私のように捨てたの?
彼女とも愛し合っていたんでしょ?


「君には関係ない話だと思うが? 私が誰と結婚しようが私の自由ではないのか? 君ら社員の了承を得なければ私は結婚できないのか?」

「そうではなく、ただ納得しない社員がいると彼女の立場が……」

「絵里には手出しできないだろう? 専務夫人には権限を与える。後の社長夫人になるのだからな」


尊の言葉で私は気づいた。

尊と結婚することはいずれ社長夫人になると言うことだ。

こんな何も持たない一般人の私が尊との未来を夢見ていたなんて勘違いも甚だしい。