さよならは言わない


「理由もなく笹岡との契約を打ち切るおつもりですか? 笹岡は立派に仕事を熟し責任のある仕事をしているんですよ」

「仕事を辞めさせる理由はある」

「まって、私は今の仕事をそのまま継続してもいいわ。もし、派遣社員と言うのが困るなら契約社員かパートの直接雇用に替えて」


私の希望など通るはずがないのにバカな提案をしてしまった。

尊は面倒を減らしたいから私を尊のいる会社で働かせたくないのに。

なのに、バカな事を口走っていた。


「君は仕事はしたいのか?」

「ええ、短時間でもいいから仕事はさせて」


尊は腕を組み少し考えていた。そんな私達のやり取りを見ていた森田さんは少し困った顔をして私を見た。

今の表情は何だろうかと森田さんの顔を見ていたら、森田さんはソッポを向いてしまった。


「分かった。君には森田君の仕事を手伝ってもらおう。但し、派遣の仕事は辞めることだ。だから、我が社の契約社員として働いて貰うよ。それも時間限定で」

「ありがとう。私はそれでいいわ」

「森田君はどうだろう?」


私達の会話が今一つ理解できない森田さんは首をかしげながら私の雇用形態が変わる理由を知りたがった。


「何故、派遣社員から直接雇用に切り替えるのですか? 彼女だけ特別扱いすると益々周囲からは非難されるばかりになりますが」


森田さんは尊に特別扱いを受ける私が周りの社員に冷たい態度を取られているのを知っているから心配してくれているのだと思った。