尊が内線で呼び出して直ぐに森田さんが専務室へとやって来た。
その部屋に私がいたことで森田さんは少しビクリと体が反応していた。
私が尊と交際しているとは言え、勤務時間中まで一緒にいるとは思わなかったのだろう。
尊は私の手を取りソファーから立ち上がるように言うと、向かい側のソファーへと座るように言われ腰を下ろした。
私の隣に尊が立つと、森田さんに私が座っていたところへ座るように促した。
「森田君、座ってくれ」
私は今は部下としてここにいるのではなく尊の婚約者としてここにいる。
だから、応接セットが並ぶソファーの奥側が尊の座る位置でありその隣が私の座る位置になる。
そして、部下である森田さんは入口側のソファーへと腰かけることになる。
座る場所も気にかけなければならないなんて、なんて面倒なのかしら?と、つい声に出して言いたくなった。
いつもならこの程度のことでは目くじらを立てないのだけど、きっと、急な結婚話で私は疲れているのだと感じた。
なのに、尊は私の気持ちなどお構いなく話を進めていく。
「実は、笹岡絵里だが本日限りで派遣社員としての契約は破棄することにした。そこで、君の仕事の補助をしてくれる社員が必要となるのだが」
「ちょっと待って下さい。彼女は既に私の仕事のサポートとして欠かせない存在なんです。それを今そんなこと言われても困ります」
森田さんは私の契約破棄を認めないと尊に食いつこうとしていた。
しかし、尊は専務の権限を持って森田さんの意見を跳ね除けた。



