さよならは言わない


営業部長は専務に内線で連絡をすると私は暫く待機しているようにと言われた。


「取りあえず森田、お前の横のデスクへ案内しなさい。専務からの連絡も直ぐに入るだろうから」

「ええ? 俺、早く仕事に取り掛かりたいのに。面倒ばかり増えるな」

「申し訳ありません」


営業3課の森田さんという人はのんびりと仕事をしている割には口だけは厳しい。

自分には甘く人には厳しいという性格の持ち主なのかしら?と思いたくなるような人だ。

あまり近づきたくないタイプだと思いながらも、渋々この人の隣の机の椅子を引きそこへ座った。


「絵里、どうしたの? 何があったの?」


椅子に座った私のところへと心配した友美が駆け寄ってくれた。


「なんだ?武田の知り合いか?」

「私の友達なんです。今日から同じ会社で働くと聞いていたから楽しみだったけど、まさか同じ部署だなんて嬉しいわ」

「ふーん、知り合いがいるからここを決めたのか?」

「そんなんじゃありません」

「俺は、知人もなにも仕事が出来なければ期間途中でも契約は破棄させるんだ。それはしっかり頭に入れておけよ」


私は遊びにここへ来ているわけではないのに。

どうして知り合いが居るだけでそう思われなくてはいけないの?

人を外見だけで判断しようとするなんてこの会社はいったいどんな教育しているのよ。

専務があんな人だからきっとこの会社で働く社員も普通の人達ばかりじゃないわ。


だけど、私には関係ない。

仕事さえ無事出来ればそれでいいのだから。


森田さんの隣の机を案内されてから5分程した時に、部長へ内線の電話が入って来た。


「え、ええ。そうです。はい、はい、分かりました」


部長への電話はあっという間に終わってしまった。

すると、部長は私達の方へとやって来た。


「専務と派遣会社の方で話し合った結果残業も含めた時間で勤務して欲しいそうだ」


担当の田中さんは派遣社員を使い捨てのボロ雑巾扱いする会社を嫌う。

安い賃金で使うだけ使うと後は用済みでポイされてしまうのだから。

きっと私もこの会社で働きアリの様に働かされるのだわ。